
朝7時。
東京都内のコンビニでは、70代のスタッフがいつものようにレジに立ち、お客様を笑顔で迎えています。
また、マンションの管理人、タクシー運転手、スーパーの品出しスタッフ、工場で若手社員を指導するベテラン技術者――。
こうした光景は、今の日本では決して珍しいものではありません。
超高齢社会を迎えた日本では、「70代になっても働く」という選択が、ごく自然なものになりつつあります。
仕事は収入を得るためだけではありません。
社会とのつながりを持ち、自分らしく毎日を過ごすための大切な居場所にもなっています。
70歳まで働ける環境づくりが進む日本
こうした変化を後押ししているのが、政府と企業の取り組みです。
2021年に改正された高年齢者雇用安定法では、企業に対して70歳まで働く機会を確保する努力義務が求められるようになりました。
その方法は一つではありません。
企業は自社の状況に合わせて、
・定年後の再雇用制度
・定年年齢の引き上げ
・定年制の廃止
・業務委託やフリーランス契約
など、さまざまな働き方を選べます。
現在では、多くの企業が70歳まで働ける制度を整え、経験豊富な人材を積極的に活用しています。
「少しだけ働く」という新しい働き方

70代で働く人の多くは、現役時代と同じような働き方を求めているわけではありません。
週に2〜3日だけ。
午前中だけ。
体力に合わせて無理なく働く。
こうした柔軟な働き方が広がっています。
また、長年培った知識や経験を若い世代へ伝える仕事も増えています。
製造業や建設業では、ベテラン社員が技術指導を担当し、企業にとって欠かせない存在となっています。
働く理由は、お金だけではない
もちろん、年金だけでは生活費が不安という声も少なくありません。
物価の上昇もあり、収入を補う目的で働く人は増えています。
しかし、それだけではありません。
多くのシニアが口にするのは、
「家にいるより、人と話せるのが楽しい」
「誰かの役に立てることがうれしい」
という気持ちです。
日本では、このような生きがいを**「生きがい(いきがい)」**と呼びます。
仕事は生活費だけでなく、心の健康や社会とのつながりを支える大切な役割も果たしているのです。
世代が支え合う職場へ
「高齢者が働くと若者の仕事が減るのではないか」
そんな意見もあります。
しかし実際には、多くの企業で役割分担が進んでいます。
若い世代はデジタル技術や新しい分野を担当し、
シニア世代は接客、施設管理、運転、技術指導など、経験を生かせる仕事を担っています。
深刻な人手不足が続く日本では、こうした世代を超えた協力が、社会を支える大きな力になっています。
これからの日本に必要なこと
超高齢社会では、「何歳で定年を迎えるか」よりも、
「何歳になっても、自分らしく社会とつながれるか」
という視点が、ますます重要になっています。
働くことを無理に続けるのではなく、自分の体力や生活に合わせて働き方を選べる社会。
それが、これからの日本が目指すべき姿なのかもしれません。
70代で働く人々の姿は、「年齢だけで可能性を決めない社会」が少しずつ形になっていることを教えてくれています。